「問題」は、誰にとっての問題か?
職場において「問題がある」と感じることは、日常的に起こります。しかし、その“問題”は、全員にとって共通のものとは限りません。
たとえば──
ある職員は「会議が多すぎる」と感じていても、別の職員にとっては「情報共有ができて安心」と感じているかもしれません。
ある部署では「上司の指示が曖昧」と捉えられていても、別の部署では特に困りごとになっていないこともあります。
つまり、問題の見え方は、立場・経験・関係性によって大きく異なるのです。
「問題」が「課題」へと変わるとき
私たちが組織開発の支援に入る際、まず行うのは、「いま、この組織にとって取り組むべき“課題”は何か?」を明らかにするプロセスです。しかし、実はこのプロセスこそが最も難しく、そして最も重要なステップだと考えています。
なぜなら、
- 問題は複数同時に存在することが多い
- 「誰にとっての問題か?」によって、捉え方や優先順位が異なる
- 「誰がその課題を決めたのか?」によって、取り組みへの主体性が変わる
といった理由があるからです。
大事なのは「合意形成」
チームや組織が何かに本気で取り組むためには、「この課題に取り組もう」と自分たちで選び取るプロセスが欠かせません。
このプロセスによって、以下のような効果が生まれます。
- 納得感:やらされ感ではなく、自分たちで選んだという実感
- 主体性:課題が「自分ごと」になりやすくなる
- 未来志向:「この課題を通じて、組織として何を育てたいか?」という問いとつながる
逆に言えば、上位者が一方的に設定した「課題」には、現場からの内発的なエネルギーが宿りにくくなる傾向があります。
私たちのアプローチ
私たちが組織支援に入る際には、「問題の共有」だけでなく、「どの課題に取り組むか」をチームで選定するステップを大切にしています。
たとえば以下のようなプロセスを設けます:
- 異なる立場のメンバーで「現場で起きている問題」を出し合う
- 問題ごとに「影響の範囲」「リソースの大きさ」「変化の可能性」などを整理する
- 「この課題に取り組むことで、私たちは何をよくしたいのか?」を対話する
- その上で、「これが“私たちの課題”だ」と合意する
このプロセスは、単なる課題の選定にとどまらず、対話と関係性を育む重要な場にもなります。
組織課題は「共に選び取るもの」
課題は、誰かが一方的に設定するものではなく、組織のメンバーが共に選び取るものです。
この合意形成の過程を丁寧に扱うことができる組織は、 関係性が育ち、行動が変化し、やがて組織文化そのものにも変化が生まれていきます。
あなたの職場では、「課題を共に選ぶ話し合いの場」は設けられていますか?