1. 組織開発が求められる時代背景
変化が激しく、不確実性の高い時代(VUCAの時代)において、従来の組織運営のやり方では立ち行かなくなっています。技術革新のスピードが増し、社会の価値観が多様化する中で、組織の課題は「仕組み」や「戦略」だけでは解決できず、そこにいる「人」の在り方が大きく影響することが明らかになってきました。
特にリーダーの変化がもたらすチームや組織への影響は大きく、リーダー自身の内面的な成長が、組織全体の変容を促す鍵となります。例えば、チームの心理的安全性が低いと感じるなら、それはリーダー自身がどのような関わり方をしているかを映し出している可能性があります。そのため、組織開発においては、個人の内的変革を伴うアプローチが求められています。
2. 私たちのアプローチ:内的変革と組織の成長の関係
私たちは、次のようなアプローチを用いて、組織の変化をサポートしています。
・NVC(非暴力コミュニケーション)
アメリカの臨床心理学者マーシャル・ローゼンバーグが開発したコミュニケーション手法で、「感じる」力(いわゆるEQ的力、感情知性)を養うことを重視します。私たちはこれまで幼い頃に大人たちから言われていたことが染み付いています。組織内でも、「感情的になることはよくない」「論理的に伝えなければならない」という価値観が根強く、結果的に「感覚」「感情」が抑圧されがちです。しかし、これを軽視すると、表面上は「Yes」と言っていても、本心では納得していない状態が生まれ、変化にはつながりません。その時に手がかりになるのが「感情」です。
まずは、自分の内側に起こっていることに意識を向け、感情に気づき、考えと区別し、本当に創りあげたい関係性やコミュニケーションを築くことができるように変化を促します。
・プロセスワーク
プロセスワークは、心理学者アーノルド・ミンデルによって提唱されたアプローチで、個人や組織の成長・変容を促す理論体系の一つです。その中心的な概念の一つとして「6象限」があります。これは組織内で起こる問題や変化を多層的に捉えるためのフレームワークとなり一人ひとりの視野を広げるために役立ちます。
6象限とは、以下の6つの視点から構成されます。
- 個人の内的体験(感情や思考)
- 個人の外的行動(目に見える振る舞い)
- 組織の文化や価値観
- 組織の構造や制度(役割、ルールなど)
- 集団のダイナミクス(関係性やパワーバランス)
- 環境的要因(市場、社会情勢など)
例えば、組織の生産性が低下している場合、それは単に業務プロセスの問題だけでなく、リーダーやメンバーの内面的な不安、組織文化の閉鎖性、役割分担の不明確さなど、複数の要因が絡み合っている可能性があります。6象限から事象を観ることで、表面的な問題だけでなく深層にあるものも含め、複層的・多角的に捉えることができるのです。
また、プロセスワークの中心概念の一つに「ランク」があります。
ランクとは、権力や影響力の大きさを表しますが、自分が無自覚に持っている権力や影響力に気づくことで、より健全な関係性を築くことができます。組織の中では、意図せずに相手に圧力を与えていたり、見えないパワーダイナミクスが働いていることがあります。これに気づき、対話を通じて調整することで、組織内の関係性がより良いものになっていきます。
・体験学習
私たちはコンサルタントではなく、学習の機会を提供するファシリテーターです。研修と聞くと座学で何時間も知識を取り込むといった学校の授業とにているものと認識されがちですが、体験を通じた学習を取り入れているので、「学ぶこと」への抵抗感を減らしています。多く用いるのは、組織内の「対話」を通じて生まれる「気づき」から、一人ひとりの変化を呼び覚ますワークがあります。この体験になれていくことで、問題解決方法として多数決を採用するのではなく(この方法が適している場合もあるでしょう)、その都度ベストな解を選択できるよう、話し合いが用いられるようなタフな組織を目指します。組織内に「対話の文化」をつくることが、結果的に生産性やエンジゲージメントの向上が見込まれます。また、組織全体が学びを通してアップデートされていくので、変化に対する適応力が高まります。
4. 実際の現場で感じた「内的変革」が組織を変えた事例
ある企業のリーダーは、周囲から「圧がある」「怖い」と思われていました。しかし、研修の中で「自分の心が動いたエピソード」を共有するワークを行った際、リーダーが自分の感情を率直に語る場面がありました。それを聞いたメンバーは、リーダーの意外な一面に触れ、彼に対する見方が変化しました。
この変化は、単に「話をしたから」ではなく、リーダーが自己開示をすることで、組織内の心理的安全性が高まり、メンバーとの関係性が深まったことによるものです。リーダー自身が「自分の在り方」を見直し、それがチーム全体の変化につながる好例となりました。
5. 組織を変えたいなら、まず自分自身から
組織開発において、効果的で具体的な戦略の立案は大事です。しかし、いくら外側の施策を整えても、そこで働く人たちが変わらなければ、本質的な変化は起こりません。
「組織が変われない3つの理由 『元気』と『成果』を同時に実現する組織のつくりかた」(西田 徹 (著), 山碕 学 (著), 松村 憲 (監修))では、以下の3点が指摘されています。
- 対立を力に変えられていない
- 「今、ここ」しか見えていない
- 実行するメンバーの内発的動機づけができていない
私たちは、「世界を変えたいなら、まず自分を変える」という信念のもと、組織開発に取り組んでいます。これまでの経験の中で閉じられてしまった「自分自身の内側にある変化の可能性」に目を向けることの大切さを体験していただきたいと考えています。
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